「『起業』とまでは言わなくても、いつか自分でビジネスをしてみたい!」
「とはいえ、いますぐ何かビジネスを始めるには、実力が足りないかも….」と考えたことはありませんか?
ビジネスを始めるにはどのような能力が必要でしょうか。「企画力」「集客力・営業力」「サービス提供力」「会計や税金の知識」など、様々な業務を同時並行でこなす必要があります。
難しく考えるほど、起業は大変に思えるかもしれません。しかし、実際は手軽に自分のビジネスを始める方法があります。それが「フリーランス型の複業」で自分自身を商材に仕事を始めることです。
「フリーランス型の複業」とは、自らの技能を持って複数の仕事を回していくことです。複業を通して座学では得られない、経営者の視点でビジネスを学ぶことができます。
本記事では、なぜビジネスを始めたい人が経営者目線で複業すべきなのか?そして、本業が忙しい会社員でも効率的な複業をサポートするツールをご紹介します。
複業とは、いわば“自分商店”の経営者
複業を実践することは、いわば個人の会社を経営しているようなものです。企画に始まり、営業、サービス提供、経理・会計、法務・税務など、基本的には全て自分で行います。
例えば、新規のビジネスを立ち上げる際にまず取り組むのが、自分が提供するプロダクトやサービスは「誰の」「どんな課題を」解決するか考えることです。仮説を立てたり、検証のために実際にヒアリングを行ったり、プロトタイプのサービスを提供してみて、顧客の反応を確認します。その過程を通してプロダクトを磨き上げ、価値提供を行います。
当然ですが、複業もまた同様の手順を踏みます。世の中のニーズを丁寧に紐解いて、自分が提供できるサービスで解決できる課題を見つけます。顧客を獲得し、サービスを提供する。その上で、対価をいただき、最終的には年度で会計処理を行います。これは、まさにビジネスにおける一連の流れを経験することと同じなのです。
特に、大企業などでは部門ごとに担当領域が異なり、縦割りの仕事をしている会社員の方が多くなりがちです。だからこそ、平日はサラリーマンとして勤める一方で休日はあえて複業にチャレンジすることで、経営者と同じ視点でビジネス経験を積むことを推奨しているのです。
現代では多様なツールが、複業のハードルを下げてくれる
実際に始めてみるとよく分かるのですが、ビジネスを一人で始めると、想像以上にやらなければいけない作業がたくさんあります。しかし、幸いにも今の時代は便利なツールがたくさんあるため、昔に比べて楽に複業できると言えるでしょう。
例えば、企画を立てるならマインドマッピングツール『X-mind』をオススメします。アイデアのメモ帳として優れているだけでなく、構造的に問題を捉え、解決策を探すのに役立つツールです。また、クラウド上にもデータを保管できるため保存・記憶し忘れることもありません。
他にも、デザイナーに頼らず自分で営業用のチラシや名刺を作成するのであれば『Canva』を利用してもよいでしょう。テンプレートが数多く用意されており、全くのデザイン初心者でも相応のものが作れるようになっています。また、無料で作れるWebサイト『ペライチ』を利用することで見込み顧客の有無を検証することも可能です。ここで紹介する全てのツールが無料ないし安価で必要十分な機能が利用できるのが今の時代です。
経理なら会計ソフトで有名な『Freee』や『マネーフォワード』を利用することで財務・会計業務が一元的に管理できます。それらのクラウド会計ツールを導入するまでもなく請求書だけを発行・管理したいのであれば『Misoca』などでも簡単に請求業務が行えるでしょう。
これらのツールを使うことで、不足スキルを補うための支出や無駄な書類管理などから開放され、誰でも複業を効率的に管理できます。
目標は、自分の言い値で仕事をすること
フリーランス型で複業するのなら、自分の言い値で仕事ができるようになるべきです。もちろん複業を始めた当初から、すぐに言い値で仕事ができるようにはなりません。多くの場合は自分が想定するよりも安い金額で実績を積み、そこから少しずつ値上げをすることで自分の希望金額での労働にアップデートしていく必要があります。
では、どのようにして自分の言い値で仕事ができるようになるのでしょうか。
それは、複業を始める時点で「言い値」を宣言し、自分のスキルが上がるごとにサービスの単価をあげていくことです。これまでにDUAL WORKが多くの複業実践者を取材し分かったことは、価格を安くしすぎると稼働が増えるだけで、あまりメリットがないことです。
これはスキルシェアの浸透により供給過多になり、価格崩壊が起きていることを意味します。提供する価格が安いと、顧客もまた安さを求める悪循環が生じます。フリーランス型の複業で単価は低いままで顧客の数が増えてしまうと、稼働時間が増えるのみで自分自身が疲弊してしまうのです。
だからこそ、最初から単価を上げるマインドが必要になります。また、それに合わせてスキルを常に磨いていく、言わば上昇志向の方向性がフリーランス型の複業にはなければいけません。
時間は作り出すもの。せめて本業の労働時間の30%を捻出せよ
自分が提供するスキルを磨き続けることは、長期に渡って単価を上げていくための必須の条件です。しかし、多くの人は本業と複業の両方をこなすことで精一杯になり、時間が足りないのではないかと考える方も多いと思います。
みなさんは、1週間を時間単位に置き換えて考えたことはありますか?単純計算すると1週間は192時間(24時間 x 7日間)です。そのうち休日を合わせた48時間は、1週間の実に28%を占めています。ここから本業と同じくらい複業の成果をあげるのであれば、約30%の価値を出す必要があると仮定します。
たとえ、本業が月曜日から金曜日までの午前9時〜夕方18時で縛られていたとしても、複業が仕事単位で自由に働ける「フリーランス型」であれば、本業の労働時間である週40時間の30%、週12時間の労働時間を捻出することは不可能ではないと思いませんか?大事なことは複業や勉強時間を確保するなら、時間を細かく整理して捻出することです。
もちろん、人によっては「プライベートの時間をもっと確保したい」「本業が毎日夜遅くまであるため、土日しか時間が使えない」など、なかなか時間の確保が難しい方もいらっしゃると思います。しかし、複数の仕事を本業として行い人生を切り拓く気概があるのなら、最初は多少の無理が必要な場面が出てきます。どれくらい複業に力を入れるかは個人の判断にゆだねられますが、自分の目的に沿って時間の捻出を考えてみてはいかがでしょうか。
“自分商店”の経営者として、貪欲に学ぶ
成功する経営者の多くは、貪欲に勉強し続けています。だからこそ、複業で成功するには「自分商店」の経営者として、貪欲にビジネスを学び続ける姿勢が大切です。
当たり前ですが、知識労働をするときに勉強しない人はいませんよね。勉強を怠って過去の知識にしがみつくままでは、遅かれ早かれ複業として十分な価値提供を行うことができなくなります。自分自身の実力をストレッチをしないで得られるものはないので、学ぶことや技術研鑽は全ての複業実践者がプロとして持つべき心構えになります。
複業で身につけたスキルや経験は一生使える財産になります。最終的に自分が本格的に独立・起業するときにも役に立つだけでなく、視座が高くなるので本業のビジネスでも活用できるスキルばかりです。これからビジネスを始めたいと考えている人は、ぜひ一度「複業」に取り組んでみてはいかがでしょうか?
執筆: 大畑朋子
企画・編集: 新井勇作
デザイン: 中山亜希