日本に比べてフリーランスが一般的なアメリカでは、複数の仕事を持つ人のことをよく“side hustlers(サイド・ハッスラー)”と呼んでいます。
本記事では、フリーランス大国と呼ばれるアメリカの雇用形態の特徴や、直近の複業事情をご紹介します。アメリカでフリーランスが増え続ける理由や彼らの複業を始めるモチベーションは何なのか。ぜひ最後までお読みください!
フリーランスが増えやすいアメリカの雇用状況
そもそも、日本に比べてアメリカにフリーランスが多い理由として、日本と異なる雇用形態の特徴が挙げられます。
日本で当たり前とされている「新卒一括採用」や「終身雇用」やといった雇用形態はアメリカには存在しません。アメリカでの雇用の原則は「双方の自由意志に基づくもの」とされています。そのため理由の有無に関わらず、従業員は自由に会社を辞めることができ、雇用者も従業員を解雇できるのです。また、アメリカでは専門職での採用が一般的なので、スキルさえあれば採用されるのがアメリカ型雇用の特徴です。
上記の理由から、日本に比べてアメリカでは転職そのものが一般的であり、人材の流動性が確保されています。社会で通用するスキルさえあれば、やりたいことを仕事にできる環境がアメリカには整っているのです。
企業とフリーランサーのマッチングを行うUpworkとフリーランスのための組合活動を行うFreelancers Unionが報告した調査によると、アメリカのフリーランス比率は2014年から約5年で17%から28%まで増加。2019年時点で35%という結果となっています。今後もアメリカのフリーランス人口は増え続けると予想されています。
一方、日本ではランサーズの「フリーランス実態調査 2021」によると、日本のフリーランス人口は2021年から急上昇しているものの、労働人口の24%にとどまっているようです。今後も増加する傾向にあると思いますが、アメリカほどの市民権を得られるか?というと、懐疑的にならざるを得ないのが現状です。
3人に1人が複業に取り組むモチベーションとは
3人に1人が複業をしているアメリカで、複業を始める人が増え続けている理由は何でしょうか。タスク自動化ツールを提供するアメリカの会社Zapierの調査によると、約46%の人は将来的な不労所得のために複業を始めたという結果が出ています。18歳以下の子どもを持つ人は、子どもを持たない人に比べて複業をしている比率が2倍であったことからも、将来の金銭的不安などを緩和するために複業という手段をとっている人が多いことが分かります。
他にも、収入だけを目的とするのではなく、個人の生活の充実や楽しみのためにやっている人が38%、自分のビジネスアイディアを試すために複業をスタートさせる人が16%という結果となりました。
2020年はアメリカもコロナの影響を大きく受けた1年となりましたが、このコロナ禍でも複業をする人は増えているようです。これは企業側が優秀な人材を契約ベースで採用した上で、コスト的にも負担の少ないフリーランス人材の受け入れを強化していることによる影響とも言われています。
アメリカでの具体的な複業例
DUAL WORKが推奨する複業には「フリーランス型」「コンテンツ型」「投資型」の3種類があり、それに加えて、できれば避けたい「作業型」の複業があることをこれまでにもお伝えしてきました。
アメリカにおける複業の案件獲得方法として、最も多いとされているのが知人からの口コミ経由(67%)だそうです。その次に直接のSNS経由(23%)、さらにFreelancerやUpworkといったアメリカ版クラウドソーシングサイト経由と続いています。その中で、見つけた具体的な複業例をいくつかご紹介しましょう。
プロフェッショナルなフリーランス型
フリーランス型の例としては、本業でPR関係の仕事に従事する人が、複業ではブライダルコンサルの仕事を行い、月$1,200の収入を得ている人もいるようです。他にも、本業では広告関連の仕事を行っている人が、ゴーストライターやグラフィックデザイナー、プレゼン資料の作成代行など本業のスキルを活かした複業で月$3,000もの収入を得ている例も確認できました。
自分の好きなことや、仕事で身につけた得意なスキルを複業にして取り組んでいるのがフリーランス型の特徴です。
作業型
一方ですぐに複業を始められるものの、資産としては積み上がらない作業型の複業の代表的なものとして、犬の散歩の代行者やベビーシッター、ウーバーの運転手やデリバリーの配達員などが挙げられます。日本ではまだまだマイナーと思われる犬の散歩代行は、一般的に30分で$10〜$30程度の収入になり、ベビーシッターは1時間で$25程度の収入と言われています。やり方次第ですが、日本での複業のヒントになるかもしれませんね。
特に2020年はコロナの影響を受け、感染対策の観点から外での業務となる犬の散歩や、デリバリーへの需要が高まり、複業として始める人が増えたようです。
念の為に整理しておくと、DUAL WORKではこうした作業型の複業は推奨していません。それは、長期的な顧客を獲得したり、横展開できるビジネススキルにはつなげられず、本人の資産として積み上げることが難しいからです。しかし、副業として金銭を目的とした場合には選択肢として検討しても良いでしょう。いずれにせよ、ご自身の責任が取れる範囲で副業の収入手段として動ける用意しておくことが重要です。
2021年もアメリカは複業人口が増加予定
2021年1月に発表されたZapierの調査では今年中に複業を始めると回答した人はアメリカ全体で 6,160万人もいたことから、今後もアメリカの複業人口は増えていくことが予想されています。
今後もアメリカの複業動向が、どう日本の複業事情に影響していくか、引き続きDUAL WORKでも追って行きます。DUAL WORKでは日本国内だけに限らず、複業に関する世界中の情報を、今後もリサーチして公開していきます。ぜひ皆さんの複業のヒントとして参考にしてみてください!
執筆: 松本佳恋
企画・編集: 新井勇作
デザイン: 中山亜希