企業の人手不足が問題となり、優秀な人材の取り合いになりつつある今の時代、正社員ではなく業務委託などといった形で人材を採用する動きが増えています。そんな時代に合った、複業人材を採用できるマッチングプラットフォームが複業クラウドです。
今回は複業クラウドを運営されている株式会社Another works代表取締役の大林尚朝さんに編集長の新井がインタビュー。設立からの約3年間を振り返り、多くの人が利用する複業マッチングプラットフォームに成長した理由と、今後の展望についてお話しいただきました。
株式会社Another works
代表取締役 大林 尚朝
早稲田大学在学中に株式会社リアライブに参画しマーケティング責任者として強固な集客基盤を構築。その後、株式会社パソナ パソナキャリアカンパニーに新卒入社し顧問やフリーランスを業務委託紹介する新規事業に従事。全社総会にて史上最年少で年間最優秀賞を受賞するなど最高記録を数多く樹立。2018年に株式会社ビズリーチのM&A領域の新規事業における創業メンバーとして参画。M&Aプラットフォーム「ビズリーチ・サクシード」を立ち上げ、マーケティング部隊をゼロから構築。2019年5月7日に株式会社Another worksを創業。複業したい人と企業をつなぐSaaS型の複業マッチングプラットフォーム「複業クラウド」を展開中。
月額固定料金制の複業マッチングプラットフォーム「複業クラウド」
──まずは簡単に複業クラウドについて教えていただけますか。
大林:複業クラウドは複業・フリーランス人材のためのマッチングプラットフォームです。大きな特徴は成約手数料が発生しないこと。企業は月額利用料のみで無制限に優秀な人材を採用することができます。
2019年にスタートし、複業人材の登録者は33,000人を超えました。複業クラウドを利用している企業様も累計750社以上を突破。今後、大手企業の複業解禁が加速することで登録者も伸びていくと予想しています。
──複業人材マッチングプラットフォームを始められたきっかけを教えてください。
大林:もともと父が会社を経営しており、いつか起業を、と考えていました。新卒では、ある方からの紹介をきっかけに株式会社パソナ パソナキャリアカンパニーに入社。業務委託紹介事業、いわゆる複業のマッチング事業に従事しました。その中で契約の自由度が高く、雇用の柔軟性がある複業への可能性を感じました。これを広めることが自分の使命なのではないかと思い、株式会社ビズリーチでプラットフォームビジネスの立ち上げを学んだ後、起業しました。
それまでは縁と運で生きてきましたが、起業を決意できたのは、市場性・権威性、そして覚悟の3つが揃ったからです。複業解禁が騒がれ、フリーランス市場が拡大傾向にあったこと、この市場を変えていきたいという思いが起業の後押しとなりました。
──数ある人材マッチングサービスの中でも、月額利用料のみというのは複業クラウドの大きな特徴なのではないのでしょうか。
大林:新卒で働いていた頃、ちょうどNetflixなどの海外のサブスクリプションサービスが日本に上陸し、話題になっていました。日本の人材マッチングサービスではこれまで成約手数料やスカウト料をいただくのが一般的でした。それを月額固定料金制にすることで、何人でも採用できるモデルにできたら面白いなと思ったんです。実際に創業間もないスタートアップやベンチャーから、何人採用しても費用が変わらないのはありがたいというお声をいただいています。
複業クラウドの拡大の背景にあるのは啓蒙活動と事例作り
──5月で4期目に入るとのことですが、この3年間で複業市場はどのように変わってきましたか。
大林:「複業」という言葉の知名度はこの3年間でかなり上がってきたと感じています。3年前は「副業」の方が一般的に使われていましたが、地方紙でも「複業」という言葉が当たり前のように使われるようになったことは大きな進歩です。これは広報力を信じて私たちが発信活動や啓蒙活動を行ってきた成果でもあると思っています。
──やはり、地方で「複業」を当たり前にすることは難しい挑戦だったのでしょうか。
大林:地方が持つ、複業人材を登用することへの不安や抵抗感と向き合うことは簡単ではありませんでした。複業の啓蒙活動を続ける中で、過去の習慣は私たちの最大の壁でしたね。
地方では人材不足であるものの、正社員を取る余裕がないという問題があります。その一番の解決法は複業人材の登用です。しかし、やったことがない・前例がないという理由で断られることが多くありました。複業人材を登用することにリスクはなく、むしろメリットしかないということを伝える啓蒙活動を地道に続けてきたからこそ、徐々に複業人材に目を向ける企業や自治体が出てきたと思っています。
──複業クラウドは30近くの自治体とすでに連携協定を結んだと聞いています。
大林:奈良県三宅町の森田町長が先駆者となり、自治体での複業人材の登用に一緒に挑戦していただいたことが連携協定がここまで増える大きなきっかけとなりました。
三宅町は日本で2番目に小さい町で、当時森田町長は2番目に若い町長でした。失敗が許されない中、過去の慣わしにとらわれることなく、町民を幸せにするための手段として複業人材の登用が必要であるのであれば、と覚悟を決めてくださったのです。今では15人の複業人材を採用しており、自治体における複業人材活用の先駆者となっています。
──三宅町の成功事例が、他の自治体の複業人材登用を促進させているのですね。
大林:成功事例を作ること。それが今後も鍵を握っていくと思います。
例えば、公務員の複業。現状では国家公務員法により公務員の複業は禁止されています。しかし、一方で金銭の発生しないボランティア(副業)は許可されています。この法律を変えるのは簡単ではありませんが、小さな成功事例を増やしていくことができれば、法律も変わっていくはずだと信じています。事例をスピーディーに作ることで、複業人材が他の自治体にも受け入れられるようになり、将来的には公務員の複業解禁に繋がると信じています。
複業市場にしかいない人材を求める企業が増える時代へ
──今後、複業はどうなっていくとお考えですか。
大林:複業解禁をしないことは企業にとっても、個人にとっても不幸な選択であるという認識が当たり前になっていくと思っています。大手企業は転職防止のためにも複業解禁をせざるを得ない時代になるのではないでしょうか。
また、転職市場にはいない優秀な人材を採用することを目的に、複業クラウドを活用する会社が増えていくことを期待しています。実際に、転職サイトには登録していないものの、複業クラウドには登録している人材がたくさんいます。これからはそんな人材が、複業を経て転職を決意する、複業転職やお試し転職などが増えていくと思います。
──最後に、複業クラウドが目指すこれからについてもぜひ教えてください。
大林:直近の目標は47都道府県全ての自治体と連携協定を結ぶことです。ターゲットとしている人口1万人〜10万人の自治体は全国で1,000以上あります。そのうち連携協定を結べたのはまだ40にすぎません。引き続き啓蒙活動を行い、3年以内に26%以上の自治体と連携協定を結びたいと考えています。
さらに、エリアを問わず、複業人材受け入れ先を増やしていくことも目標です。その第一歩として現在はスポーツ業界や教育現場の複業人材登用を進めています。
まだまだ複業人材にはエンジニアやデザイナー職のイメージが強いですが、今後製造会社などの複業解禁が進めば、職人も増えていくことが予想されます。その際により多くの企業が優秀な複業人材を採用できるよう、複業の啓蒙活動と事例作りに全力で取り組んで行く予定です。
── ありがとうございました!今後さらに複業業界を共に盛り上げることができることを楽しみにしております。
編集後記
大林さんのインタビューで印象的だったのは「私たちが戦わないといけないのは過去の風習や慣わし」という言葉です。複業という言葉が浸透しつつあるものの、まだまだ複業人材の登用に抵抗感を持つ会社・自治体が多くいることを感じました。
何事も世の中に定着するのにある程度の時間が必要です。すでにiPhoneが登場して15年。スマホは生活に定着しなくてはならないものになりました。いまやデジタルネイティブの世代が当たり前になってきたように、これから複業ネイティブな世代もやってくるはずです。その時がきたら、複業クラウドはさらに多くの人にとって必要な複業プラットフォームとなり、Another worksはさらに大きく成長するのでしょう。
大林さん、お忙しい中貴重なお時間をいただきありがとうございました!
企画・執筆: 松本佳恋
編集: 大畑朋子
デザイン:中山亜希
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