素人から始めたホームパーティープランナー。 試行錯誤の末に複業が本業と結びついた素敵な話。 #dualwork

ゼロ→イチで新しいことに挑戦するのは、誰にとってもハードルが高いもの。ましてや、はじめたばかりなのに顧客から対価をもらうことは、とても緊張しますよね。

今回インタビューをしたホームパーティープランナーの村上あゆ美さんも、その一人。

村上さんは、会社員として勤務する傍ら、2014年から複業でホームパーティープランナーとして活動を開始。現在は企業に向けてプロデューサーを行う他、雑誌でも特集を担当するなど、活動の幅を広げられています。

今回は、本業・複業の2軸で活躍される村上さんに、ホームパーティープランナーを始めたきっかけや苦労した出来事、複業に対する向き合い方について伺いました。(聞き手:中島未知代


村上あゆ美
1985年生まれ・東京在住・夫と2人暮らし。株式会社スナップマート所属。セールスチーム・営業マネージャー。20万人の登録クリエイターに商品撮影の仕事の依頼や、アンバサダーを募って企業案件の紹介を担当。米国Jacksonville State UniversityのRestaurant Management学部卒。卒業後帰国し、飲食業界へ。2年間のレストラン勤務の後、転職を経験し現職。2014年より会社員をしながらパラレルキャリアで「ホームパーティープランナー」として活動中。TwitterInstagramnoteはこちら。

素人から始めたホームパーティープランナーから、企業との協賛を実現

──早速ですが、ホームパーティープランナーを始められたきっかけを教えてください。

村上:当時は、定時帰宅できる企業に勤めていたため、余暇の時間を有効活用できないかと漠然と考えていました。また、会社員一筋で働き続けることに不安も抱えていたんです。

現状の働き方では、自分のキャリアが自由に選択できなくなってしまう。会社員とは別にもう一つの仕事があれば、選択肢が増えて柔軟に生きていけるのではないかと考えました。

もう一つ仕事のアイデアを探して過去を振り返ると、アメリカに留学していた時代には、毎週のようにホームパーティーに参加するのが楽しみでした。そこで、「人に教えられるくらいにやってみよう!」と思い、2014年にホームパーティープランナーを始めたのがきっかけです。

──活動している中で、印象に残ったエピソードがあれば教えてください。

村上:友人と一緒に開催した「ウェディング・パーティーの企画ノウハウを教えるイベント」です。

当時はまだ素人だったため、イベントの参加費を頂くことは難しいと感じていました。しかし、お客様を呼ぶ以上はクオリティの高いイベントを開催したいと思い、葛藤の末、協賛を取ることを思いつきました。

──実際に企業とのコラボは実現したのでしょうか?

村上:実績がない中でもノンアルコールの飲料メーカーから協賛を得ることができました。「ウェディング・パーティーにお洒落なノンアルコール・シャンパンがあったら喜ばれますよ!」と、メーカーに提案する形で問い合わせたところ、5社中3社からお返事をいただきました。

「お洒落なノンアルコールはウェディングにも最適であることをもっと一般に広く伝えたほうがいいですよ」と担当者にプレゼンし、結果的に3社ともご協賛をいただけることになりました。

もちろん、営業は個人なので不安はありました。そこで本気度を見せるため、これまで個人でやってきたパーティーの写真をまとめて「実際に商品が使われているシーンの写真と、その空間を作り出すことができます」と提案したのが良かったのかもしれません。

嬉しいことに、企業からも「実現できていなかった取り組みを提案してくれた」とコメントをいただきました。個人でも企画が企業のニーズにマッチすれば価値提供できると実感しましたね。

 

パーティープロデュースで味わった、報酬設定の大切さ

──すごいチャレンジですね。初めはお金をいただいていなかったと思うのですが、その後活動していく中で、どのようなブレークスルーがありましたか?

村上:ある時、レンタルドレスサロンの社長さんから3周年パーティーをプロデュースして欲しいと見積りを依頼されました。自分が好きで続けていたことに対して、プラスアルファのお金を頂けるので嬉しかったです。しかし、当時はまだ経験が十分ではなかったため悩んだ結果、3万円でお引き受けました。

しかし、内容をよく検討すると50人規模のパーティーで、準備に約3カ月かかるものでした。報酬3万円でのプロデュースは価格設定が間違っていましたね(笑)。さすがに一人で担当することはできなかったので、報酬を折半して友人に協力してもらい、なんとか乗り切ることができました。

この案件の教訓として、プロデュースの仕事は当日までの準備工数が多く、「これでは自分が壊れてしまう」と思い、その後は工数を計算して値段を見積もるようにしました。

それ以降は月に1件程度の企業案件をこなすようになり、他にも3ヶ月に1回くらいの頻度で雑誌などから特集のコーディネートをしてほしいとお話を頂けるようになりましたね。

複業は、あくまで長期投資。長く継続することを大切に

──村上さんのように自分で価値を生み出す複業は長期的にメリットが大きそうですね。

村上:複業のタイプとして、時間を切り売りする労働集約型の人は多いと思います。確かに即金性という面でメリットはありますが、それだと短期間で体力消耗してしまい何年も続けられないでしょう。やはり、自分で長期的にキャリアを創っていきたい、と思えるくらいの何かを磨いていかないと複業は継続できないと思います。

──自分が打ち込める何かが必要なのですね。ちなみに、複業をしていて大変だと感じていることはありますか?

村上:複業で1番大変なことは「継続すること」です。誰かにやれと言われてるものでもない。なぜなら、やらなかったからといって生活に困る訳でも、怒られる訳でもないから。だからこそ毎日続けるのはすごく大変なことなんです。

──複業が安定するまで家族からはどのような反応を得られていたのでしょうか?

村上:報酬を受け取っていなかった初期の頃は、夫から「なんでお金にならないのにそんなに頑張っているの?」と言われていました。でも、報酬を得られはじめたら、夫も認めてくれました(笑)

これは複業する人が疎かにしがちなポイントだと思うのですが、たとえ複業に理解を得られなくても身近な人とは会話したほうがいいです。私も、複業を始めて大変だったのは家族の理解を得ることでしたね。

──余暇時間を複業に捧げることになるので、始めた頃は家族も悶々としてしまうんですね。

村上:そうですね。「複業は長期投資と考えること」が大事だと思います。最初はすぐ金銭的価値を生まなくても、ゆくゆくはもう一つの収入の柱として成り立つくらいの感覚で構わない。目先の利益を重視すると、疲れるだけですからね。

私自身も複業を始めた当初は夫に「長期投資として取り組んでいること」をきちんと話していました。すると実際に依頼が来るようになったときに一緒に喜んでくれましたね。

本業・複業を選べることこそが、自分にとってのアイデンティティ

──村上さんはホームパーティープランナーの仕事が軌道に乗り出してから現職のスナップマートに転職されています。独立は考えていなかったのでしょうか?

村上:独立を考えたことはありました。特に年長者の方から「そんなに外で活動したいんだったら起業するかフリーランスになればいいじゃん」と言われることが多かったです。けれども、私の場合は二つの軸で働くことが精神的にも安定し、心地いい緊張感になります。複業していることが当たり前であり、自分のアイデンティティーを大切にできる方法です。

正直、今でも理解はあまりされていないと思います。誰もが複業を肯定的に考えているわけではありませんから。だからこそ、本業で結果を出すことで複業に対する世間の認識を変化させていかないといけないと感じています。

──村上さんは複業を通して良い変化が起きた事例はありますか?

村上:一番は自信ですね。会社で嫌なこと言われたり、やりたくない仕事をせざるを得ないことはありますよね。辞めたいと思っても、他に選択肢がなく、会社にいることが辛くなる。でも、「いつでも辞められる」というマインドを持っていると、会社で自分の意見をはっきり言うことができます。

複業が本業の収入以上に得られているわけではないものの、たとえ会社員ではなくなったとしても、また一から作ればいいやと思えるようになりました。

一方で、複業をすることで会社という組織のすごさも実感しました。オフィスがあってプリンターも使える。経理や人事がいることもありがたいことなのだと。 一人で複業したことで、いろんな人が携わって成り立っていることを改めて感じました。複業をすることで本業の環境に感謝の気持ちが生まれ、本業により一層全力で取り組むようになりました。

──今後もこの働き方を続けていかれる予定ですか?

村上:実は、複業でやってきたホームパーティープロデュースの仕事が、スナップマートのプロデューサー業務と重なり、本業が9割で働いています。複業が本業になったという感覚に近いですね。

スナップマートでは一般の方がクリエイターを担っているのですが、最終消費者に距離が近いスナップマートのクリエイターたちが輝ける場を作ることで、複業に対する社会の認識も徐々に変わるんじゃないかなと思っています。今では、それが私が本業をがんばる理由のひとつになっています。

──自分の個性を大切にした上で、現在は本業をメインに選ばれているのですね。

村上:本業でやりたいことをやれているのであれば複業を続ける必要はないという考え方もあるかもしれません。けれども、私にとっては少し違うかなと思っていて。

私には選択肢があることが何より大事なので、もし私を必要として頂ける方がいるのであれば、会社・個人問わずにお受けしたいと考えています。これからも本業と複業を両立して、自由な選択肢を取れる自分であり続けたいですね。

──自分らしくいられるのが複業なんですね!とても共感できました。本日はインタビューありがとうございました!

村上:こちらこそ、ありがとうございました!

 

編集後記

終始穏やかな語り口調の村上さんはとても温かく、村上さんが企画するホームパーティもきっと温かいんだろうな。とイメージが湧きました。複業として取り組んでいたパーティプランナーが、いつのまにか形を変えて、今のスナップマートの本業として多くのクリエイターを後押しする仕事につながっている。その幸せなキャリアに、複業のロールモデルを見た気がします。

好きだからこそ、上達できるし、好きだからこそ、長く続けられる。
簡単なようで実は意外と難しいことなのかもしれません。

それを、さも当然のようにサラリと実行し、今は本業に全力投球している村上さんをDUAL WORKはこれからも応援していきます。村上さん、ありがとうございました!!

 

企画・執筆:中島未知代
編集: 新井勇作
デザイン: 中山亜希
写真: ONE PHOTO

 

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