こだわりのない人に、仕事は来ない。思想的価値を持つものだけが得られる対価とは? #dualwork

SNSで活躍している「あの人」を見ると、いつも仕事の依頼が殺到している。

そんな状況を羨ましく思ったことはありませんか?

同じ仕事をしているはずなのに、ふと「自分とはいったい何が違うのか…?」と気になるビジネスパーソンやクリエイターは多いはず。

仕事の依頼が来る人とそうでない人、その違いはなにか? ── 求められる「意味」と「機能」の差から仕事の本質について解説していきます。

仕事における“意味”と“機能”の世界

もはや機能だけでは差別化できなくなってしまったビジネスにおいて、勝ち筋を照らすのは「情緒的価値」だと言われています。

2019年4月に公開された記事「GAFAのなかで、Appleだけが『意味』の世界で闘っている」で、パブリックスピーカー・山口周さんは「役に立つけど、意味がない」から「役に立たないけど、意味がある」ものに市場をずらしていく必要があると語っています。

その具体例として挙げているのが、自動車です。

安全・快適な移動手段として選ばれやすい自動車ですが、トヨタやホンダ、マツダなど、どのメーカーの自動車に乗っても機能は一緒です。ほとんどの人は、役に立つから選んでいるのではないでしょうか。

一方で、値段は高単価にも関わらず「ベンツに乗っているときが好き」「フェラーリがかっこよくて好き」など、価値を感じて購入する人がいます。たとえ荷物があまり入らなかったり、一般的な車よりも音がうるさかったりするなど欠点があったとしても、購入者が現れるのです。

【山口周】アップルはいかに「文学」になったのか より、DUAL WORK作成)

つまり、「役に立つ」ものでは差がなくなった現代において、「意味」が価値を持つようになっているのです。

これは仕事においても同じです。AIのように「作業」として仕事に取り組む人と、その人らしい「こだわり」を持って仕事に取り組む人がいるとします。仕事の依頼者として同じ仕事を頼むのであれば、より価値あるものに変えてくれる人を選びたいと思うはず。

例えば、ファミリーレストランとホテルにあるレストランの接客スタッフを思い浮かべてください。

ファミリーレストランでは、マニュアル通りの接客が求められるため、誰が対応しても同じです。その結果、差別化することが難しく、スタッフの指名は起こりづらくなります。

一方で、ホテルのレストランは基本的な接客に加えて、お客様と会話のやりとりをしたり、細かい要望に答えたりと、プラスアルファの仕事を行います。その結果、特定のスタッフに対して指名が入ったり、レストラン全体としての価値が生まれたりします。もしあなたが大事な人をレストランに招待するならば、より信頼感のあるホテルのレストランを選ぶのではないでしょうか?

このように、仕事としてのこだわりや意味があるかどうかで、依頼の可否が決まるのです。

仕事における意味とはなにか?

先程も少し触れたように、多くの仕事は代替可能です。

いつまでも「役に立つ」だけで仕事をしていては、安く・速く仕事のできる人が現れた時に一瞬で仕事を奪われてしまいます。特に、フリーランスや複業の場合には、仕事の依頼が途絶えてしまうかもしれません。

だからこそ「役に立つ」ことを前提に、いかに「意味のある」仕事をしていけるかが課題になります。これは人だけでなく、サービス設計においても同じです。

例えば、撮影マッチングサービス『ONE PHOTO』に所属しているフォトグラファーはすべて複業です。ONE PHOTOに撮影の依頼をすることは、間接的に「複業している人を応援する」ことにつながります。つまり、共感いただいて依頼したお客様は、単に「撮影」という機能ではなく、「複業を応援する」という意味のある価値にも対価を払っているのです。

他にも、表参道に著名人に愛される NORA という美容室があります。このコロナの不況の中でも、連日満員となっているだけでなく2020年以降に新たに直営店を5店舗も首都圏に出店するなど、お店の勢いは落ちていません。また、オーナーの広江社長は会社を経営しているだけでなく、今でも美容師として現場に立ち続け、ご指名をいただくお客様の髪を切り続けています。その中には名だたる経営者も多いのですが、それは広江社長に髪を切ってもらうことが一つのコミュニティの証として情緒的価値になっているからです。

その他の有名なところでは、アウトドアブランドの パタゴニア も情緒的価値を提供しています。パタゴニアの店舗では商品を購入してもレジ袋に入れたり、包装用紙で包んでくれません。それは、パタゴニアとしての環境に配慮しているというメッセージを、購入する顧客にも共有してもらっているからです。買い物をしたのに袋に入れてくれない。そんな明らかな不便を顧客に強いているにも関わらず、顧客はその理念に納得し、満足して高額な商品を購入していくのです。

以上の例から言えることは、そのサービスやブランドの商品を利用することが、物語やメッセージの発信につながるか?そして、その顧客になることが情緒的価値を生んでいるか?で消費者による選考が、今後加速していくということです。

仕事の依頼が舞い込む人ほど、思想としてのこだわりが感じられる「自分」でサービスを売り込んでいます。そして、それは誰にも模倣・代替できないものです。だからこそ、もしまだあなたが機能で働いているとするならば、「同じ仕事をするなら、この人に仕事をしてもらいたい!」と思わせることが重要になります。

まずは、自分がどのような姿勢で仕事に向き合いたいか、考えてみてはいかがでしょうか?

自分ならではの魅力をつけ、意味のある世界で戦おう

仕事をするなら「役に立つ」ことはもちろん、自分に仕事を依頼することがどのような「意味」につながるのか、考えてみると良いでしょう。

とはいえ、どのようにしたら意味が生まれるのか悩む方もいらっしゃるかもしれません。

唯一の解決策は、自分の提供する商品やサービスに意味を持たせるために、常に新しいことに挑戦し、それを物語として発信し続けることです。これまでの時代は、仕事において成果を提供することが正解とされていましたが、これからの時代は挑戦するプロセスを共有し、時に失敗し、修正を繰り返しながら物語を構築することがファンを獲得する上で重要になります。

大事なことは、他の人とは異なる、自分ならではの魅力を身につけ、自分ならではの物語を歩むこと。自分に依頼する理由がある「意味のある」仕事のやり方を、是非、目指してみてください!

 

企画・執筆:大畑 朋子
編集:新井 勇作
デザイン:中山 亜希
参考:『プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる』尾原和啓

 

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